2009年1月30日金曜日

年金会計は面白い?

今日のAdvanced Accountingのテーマは、年金会計。

年金会計のテクニックの自体はまぁそうかなというぐらいだったが、年金会計がはらむ危険性についての教授の話はなかなか面白かった。




企業はお金を出して資産を積み立て、運用し、将来の年金支払い義務(負債)に向けて備えなければならない。

これが401Kとかとは違う従来型の「確定給付年金」の場合、この資産・負債額の変動リスクは、企業が全て負うことになる。

ちなみに、今のように景気が低迷すると、年金資産・負債にはこんなことが起こる。

(資産) 景気が低迷すると、運用利回りが減るから年金資産が目減りし、つまり将来の年金支払いに向けて積み立ててある原資が少なくなる。今のアメリカだと、2007年の運用利回りがマイナス30%くらいのところもざらにあるらしく、この金額は非常に大きなものになる、とのこと。

(負債) また、景気が低迷すると、一般的に政府は金利を下げるので、現在価値計算をするときに使うディスカウント・レートも下がってしまう。そうすると、たとえ将来の年金支払い額が固定されていて変わらなくても、その現在価値は上昇してしまうから、企業の現在の要積み立て額は増えてしまう。

上記のいずれの場合でも、景気が低迷すると、企業がお金を追加して穴埋めしなければならなくなる。

おやっと思い、「それって、

景気が悪くなる ⇒ 年金資産が減り年金負債が増える ⇒ 企業が追加資金拠出しなければならなくなり、企業の決算が悪くなる ⇒ 景気がもっと悪くなる ⇒ 。。。

っていう負のスパイラルになるってことですか?」と思わず質問したら、教授はにやっと笑うばかりだった。


ちなみに、会計上の処理に目を向ければ、米国会計基準の場合、年金資産から年金負債を引いた不足分は、それが一定の金額を超えるまでは、貸借対照表の中のAccumulated Other Incomeの中にとりあえず反映しておくだけでよいらしい。つまり、損益計算書のNet Incomeへの影響はない。(とはいえ、一定額を超えてしまった分は、Net Incomeを減らすしかなくなるのだが。)

あれ、日本はどうなるんだろう?と思ってこれも教授に質問したら、日本のことはよく分からないが、国際会計基準に準拠するのであれば、米国のようなバッファーは無く、不足分はただちにNet Incomeを減らすことになる、とのこと。



一方で、企業側が年金債務の金額を恣意的に操作することができれば、問題の表面化を先送りすることはできるだろうとも教授は言っていた。

年金負債の計算には、企業側が影響力を発揮できる(数字を操作できる?)余地があるのも事実。従業員の最終3年間の予想給与だったり、従業員の平均余命だったり、ディスカウント・レートだったり、入力するパラメーターをちょっとずらすだけで、年金負債の金額は簡単に大きく増減してしまう。

かつ、その年金負債の計算は複雑すぎて、ちゃんとした計算が行われているのか、外部からのチェック機能も働きにくいのだそうだ。



年金と聞くとかなり先の関係のないようなことに思えてしまうが、企業経営においては非常に大きな影響力を持っているということを今日は学ぶことができた。

年金資産・負債の増減に対し実際に企業がどんな対応をしてくるのか、会計の専門家だけでなく、その他多くのビジネス・パーソンにとっても、この先数年の企業決算はかなりの注目の場となるのかもしれない。

GK

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